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PEOPLE / COLUMN【COLUMN】Report of NYC Marathon

  • コラム
  • TEXT BY Chiyo Yamauchi  PHOTO BY Takuya Sakamoto

完走者数は5万人以上、沿道の観衆は200万人規模、参加国の数は世界125ケ国にもおよぶ、世界最大級のフルマラソン、New York City マラソン(以下、NYCマラソン)。第一回目が開催されたのは1970年。当時は127人だった参加者数も、今では世界屈指の規模を誇る市民マラソンに成長し、他の国際大会にも大きな影響を与えている。

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スタテンアイランドからスタートし、ブルックリン、クイーンズ、マンハッタン、ブロンクスを走り、再びマンハッタンに戻って、ランナーの聖地「セントラルパーク」でゴールという、ニューヨークの5区すべてを駆け抜ける豪華なコース設定。また、世界のトップアスリートがポイントを争う「ワールド・マラソン・メジャーズ」の一つにも指定されており、有名選手が多数エントリーすることでも知られている。

毎年11月第一日曜日に開催される同大会は、この時期のNYだけあって、とにかく天気が読めないのも特徴のひとつだ。何を着てレースに挑むか、当日の朝まで頭を悩ませるランナーも例年少なくない。今年の天気は、あいにく秋の長雨。前夜から霧のような小雨が降ったり止んだりし続け、結局レースの初めから最後まで、いっときたりとも太陽が顔をみせることはなかった。ただ、気温は13度前後と11月にしては比較的温暖。

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スタートは、5つの行政区の中で最も郊外に位置するスタテンアイランドから。午前8時半、車いすのランナーからスタート。午前11時まで、約20分の間隔でウェーブごとに順次走り出す。ランナーたちがスタートと同時に防寒用の上着を脱ぎ捨てるスタート地点の光景も、NYCマラソンを象徴するシーンのひとつだ。ちなみに、脱ぎ捨てられた衣類は、きちんと寄付されているのでご安心を。

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ヴェラザノ=ナローズブリッジを越えて、ブルックリンに入ると地元の人々の応援や音楽の演奏が聞こえてくる。老若男女、街をあげての歓迎に参加者も思わず笑顔になる。そんなブルックリンをひたすら北上し、クイーンズに入ってしばらくすると、レース最大の難所が訪れる。全長1,100メートルを超えるつり橋構造のクイーンズボロブリッジだ。

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NYCマラソンは、全部で5つの大きな橋を渡らなくてはならないのだが、この25km地点前後に位置するクイーンズボロ ブリッジは、高架下を通るので暗く、ランナーを勇気付ける声援もない。また、ゆるく長く続く上り道が、ランナーの足に大きな負担を与え、気力だけでなく体力をも無慈悲にもぎとっていく。だが、この辛さを乗り越えたら、大会最高とも言われるシーンが待っている。

いよいよマンハッタン。再び、かすかに聞こえてくる声援…橋を渡りきるとそこにはあふれんばかりの人が応援に繰り出していた。なんと、毎年200万人が参加すると言われている世界最大級の声援は、もちろんこの大会の魅力のひとつ。中には、NYCマラソンを沿道から応援し続けて30年以上、という名物応援も存在するほどだ。

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マンハッタンの一番外を北上しブロンクスに入ると、沿道には、さまざまな音楽ブースやグラフィティが。ブロンクスのカルチャーを感じ、マンハッタンに戻るとイースト・ハーレムを抜けて、セントラルパークへ。

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公園内の坂の上り下りを耐えきれば、あとは最後までフラットな道のり。ランナーたちは、59丁目の通りで沿道からパワーをもらい、最後の力を振り絞って42.195キロのフィニッシュラインを目指す。

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寒さよけのシートで身体を包まれ、ボランティアメンバーにメダルを首にかけてもらったランナーたちは、「やっと終わった」という安堵と、「やりきった」という達成感の入り混じる、なんとも清々しい表情を浮かべていた。

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主催のNYRRによると、今年の完走者は50,773人。うち、男性は29,682人、女性は21,091人。交通規制は順次解除されるものの、制限時間を設けていないので完走率が非常に高い。中には12時間かけて走りきるランナーがいる。そして、ゴールゲートは撤去されず、走りきりたいランナーたちを最後まで待っていてくれ、運営スタッフもゴールを祝福してくれるのだ。

 

NYCマラソンは、走る人だけでなく、応援する人やレースをサポートする人たちの胸にも熱いものを感じる大会だ。

ニューヨークの市民マラソンは、70年代のウーマン・リブ(女性解放運動)やゲイ・リブ(異性愛者解放運動)など、平和と平等な人権を求める市民たちの非暴力かつ健全なデモの場として、社会運動にも大きく貢献してきた背景がある。この街で、市民マラソンが単なるスポーツイベントではなく、人々の生活と社会にポジティブな影響を生み出すものだと認識されているのは、こういったレガシーがあるからだろう。

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