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PEOPLE / COLUMN【COLUMN】Brooklyn Running Co. RUNNING EVENT

  • コラム
  • TEXT BY Chiyo Yamauchi  PHOTO BY Takuya Sakamoto
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Airbnb Brooklyn Half当日の2日前。地元ブルックリンを拠点に活動する市民ランナーたちは「自分たちによる自分たちのための前々夜祭」を行なっていた。場所は、ウィリアムズバーグ地区にあるランニング専門店『Brooklyn Running Co.』。スポーツ用品店は街のそこかしこにあるが、同店のように“インディペンデントショップで、しかもランニングに特化している”というのは珍しい。有名ブランドはもちろん、地元ブランドまで幅広く取り揃えており、また、オーナーもスタッフも、全員経験豊富なランナーであるというのも頼もしい。そんなランニングへの愛がひときわ強い店だけに、地元のランナーやコミュニティと、他にはないパーソナルな繋がりを築き上げていた。

木曜日の午後7時。地元のランナーたちが、店を発着点に「シェイクアップ・ラン」を行うという噂を聞きつけた小林は、早速参加することに。ちなみに、これといった参加ルールはない。あったのは「木曜日、7時くらいから走るよ」というコミュニティ内の口約束だけだった。それゆえ、ひょっこり現れた小林に「だれ?」という者はおらず、むしろ「ここにいるってことは走るんだよね!一緒に楽しもう!」という空気に暖かく迎え入れられた。

コミュニティのリーダーが、軽いスピーチを行なった後、一同は店を後にした。全長は約2キロのウィリアムズバーグ橋をマンハッタン側へ渡り、またブルックリンへ戻ってくるというアップダウンのあるコース。オレンジ色に染まった夕暮れ時の街並みを橋の上から眺めながらのランは格別だった。

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店に戻ってきたランナー一同を待っていたのは、よく冷えたビール。気持ち良く汗をかいた後の喉を潤しながらの雑談のひと時。小林は、ブルックリンのランニングコミュニティのキーパーソンたちに現地のラン事情を聞いた。

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Jessie Zapo(ジェシー・ザッポ)

元NYC BRIDGE RUNNERSのメンバー。2012年には、Black Roses NYCを友人とともに創設。2015年より、ランニングの経験値/レベル不問のオープン・ラン・コミュニティ「Girls Run NYC」を立ち上げ、それまでなかった「もっと女性が親しみやすいランニング文化」を築いている。それぞれの生活に寄り添う新しいランニング文化をリードするキーパーソン。

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小林:ランニングを始められたのはいつからですか?

ZAPO:一人で走ることはあったけれど、グループで走るようになったのは2005年頃。「NYC BRIDGERUNNERS(通称、ブリッジランナーズ、以下、BR)」のメンバーに「一緒に走ろうよ!」と誘われたのがきっかけです。当時、私はマンハッタンのローワーイーストサイドで、バーテンダーをやっていて。メンバーが走り終わった後によく飲みにきていたんですよ。

小林;2005年頃のニューヨークでは、今のように「日常的に街を走っている人」はまだ少なかったのではないかと思います。そんな中で、当時のBRの活動はどんな感じだったのでしょうか?

ZAPO:拠点はマンハッタンのダウンタウン。週に一回、ウィリアムズバーグ橋の麓に集まって橋を往復する「ナイトラン」が主なメニューでした。終わったらダウンタウンのバーで乾杯!という「美味しく飲むためのラン」があることを知りました。

おっしゃる通り、2005年時は、今のように街を走っているひとは少なかったです。特に、橋にはひとの気配がなく、いたのはバイクメッセンジャーぐらいですかね。当時のBRの活動は「アンダーグラウンドカルチャー」としてみられていた部分が大きかったと思います。もともと中心にいたのが、スケーターやアーティスト、メッセンジャーたちでしたし、走っていたのも夜ですしね。

小林:僕はZAPOさんのことを、インスタグラムで知りました。どの写真も素敵です。あなたのインスタグラムをみて「あの場所を一緒に走りたいからニューヨークに来ました」という人も増えているのではないでしょうか?ランニングコミュニティを広げていく上でSNSをどのように活用されているか教えてください。

ZAPO:ありがとうございます。観光目的ではなく、”走りたいから 訪れる”というのは、SNS、とりわけインスタグラムが生みだした旅行の新しい動機だと思います。私が運営している「Girls Run NYC」はオープンコミュニティなので、ニューヨークの人だけでなく、他州や他国からの人も参加してくれています。私も、彼女たちのインスタグラムをみて「今後あの場所を走りたい!」と思うことは多いですし、実際「走りたいから行く」旅行が増えました。ニューヨークで私がホストしたランナーたちは、私が訪れた時に現地でホストしてくれます。現地のコミュニティと一緒に走ると、そこでまた輪が広がる。出会った人たちがニューヨークを訪れた際は、私がその人たちを自分のコミュニティに招待するという循環で、同じ価値観を共有しながら、ラン仲間が世界中に拡大しています。

小林:走ることは、もはや健康維持や美容のためのエクササイズ、記録更新のための自己研磨というレベルだけでなく、純粋に楽しいから、何か面白いことがありそうだから行うレジャーの一種なってきているんですね。

ZAPO:そうですね。「楽しい」がないと何事も続きませんから!私はより多くの人にランニングを「続けて欲しい」と思っています。各々のライフスタイルとしてね。だから「楽しい」という感情はとても大切なことだと思っています。

小林ライフスタイルとしてのランニングについて、もう少し詳しく教えてください。

ZAPO:近年は、ランニングに何かの “答え” を求めるのではなく、むしろ考え続けるための “ツール” として捉えているひとが増えている印象です。例えば、ランニングを続けていると自身のカラダの状態に敏感になりますよね。どんな栄養が自分に必要か、その食べ物がどのように作られてたものなのかを考えるようになる。私たちの生活を取り巻く様々なことに目が向くようになると、サスティナブルな環境や社会をつくるために消費行動を見直すようになったり。

「走ること」を通して、自分は社会にどういうインパクトを与えられるのか。そんなことを自然とコミュニティ内で話し合う機会も増えました。生きることって、きっと考え続けることと同義語なのだと思います。確かに考えることに疲れて、目の前に提示された答えに飛びつきたくなる日もあります。けれど、すぐに答えがでないことに対して、焦ったり不安になる必要はない、ということを私はランニングを通して学びました。今後は、楽しいランニング体験だけでなく、そういった価値観もより多くの仲間と共有していきたいですね。

小林:自分と向かい合うためのランニングの一歩先にある「より良い社会づくりのためのランニング」。「走ること」を通して、草の根レベルで変革が起きているんですね。日本でも、そういう価値観を広げていくにはどうすればいいのか、僕もランニングを通してより深く考えて行こうと思います。

 

Adrian(エイドリアン)

NYC BRIDGE RUNNERSのメンバー。生まれも育ちもクイーンズ区の生粋のニューヨーカー。コミュニティ内の「次世代のキーマン」として注目を集める。表舞台に出るより、縁の下の力持ち的ポジションを好むムードメイカー。

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小林ランニングを始められたのはいつからですか?

Adrian:2010年ぐらいかな。もともと体重が140キロくらいあってさ。痩せないと、モテないし健康的にもヤバイなと思って。ランニングを選んだのは、靴さえあればできるから。

小林手軽に始められるのがいいですよね。今はかなりスッキリされていますがAdrianさんがランを7年も続けられている理由はなんですか。

Adrian:僕は、走るたびに「いかに自分が恵まれているか」を感じられるのがいいなと思う。「走れる身体でよかった」「こんな風に気持ち良く汗をかける時間を持てて幸せだ」とかさ。それで非行に走らずに済んだしね。要は、ポジティブになれるんだ。そりゃニューヨークは大変だよ。毎日が楽しいわけじゃない。けれど、走れば気分が上がるってことを知ってる人生とそうじゃない人生、その違いは大きいよ。走ることは、僕にとって心身共に健康であるための最高の“メディテーション”だね。

小林走るたびに感じる「いかに自分が恵まれているか」。それ、よくわかります!僕も「好きで続けられるスポーツが身近にある。それだけで充分幸せじゃないか!」って感じることが多いです。

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Will Cramer (ウィル・クラマー)

ランニング専門店『Brooklyn Running Co.』のマネージャー。出身はジョージア州のアトランタ。中高生の頃から陸上トレーニングを続けており、ランニングシューズの知識も豊富。

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小林今は週にどのくらい走っています?

Will:週4回くらいかな。家から職場まで、片道約4キロくらいなので通勤がてら走ったり、週末は公園を走ったりしています。まだニューヨークにきて1年なので、走りながら街を散策するのも楽しいですね。

小林を知るのに、ランニングはちょうどいいですよね。ニューヨークならではランニング文化ってありますか?

Will:ニューヨークのランナーはヒップでお洒落だよね。スポーツとしてのランだけでなく、ちゃんと個々の「ライフスタイルとしてのラン」の文化が存在している。その日の気分に合わせて自分が好きなウエアを着て、それに合うスニーカーを選んだりさ。食ももはやヘルシーが当たり前になっているし、エココンシャスなモノも増えている。それって、身体を動かすことがライフスタイルになっている証拠だと思います。

小林この店を訪れるのはどんなお客さんが多いですか?

Will:子供から高齢者まで幅広いです。男女比もほぼ同じ。ビギナーが多いですね。これからランニングやウォーキング、エクササイズを始めたいという人や、2足目のランニングシューズを探している人などです。僕らも、はじめの一歩を踏み出そうとしているビギナーのシューズ選びにはやりがいと責任を感じています。

経験者はやや少なめです。すでに自分の好みや合うシューズというのを知っているので、欲しいものをオンラインで購入するのだと思います。それでも、今日走ったメンバーなどは、わざわざうちで買ってくれるんですよ。それは、お互い地元のランニングコミュニティをサポートし合おうとする気持ちのあらわれだと思います。

小林今日みたいなランニングイベントも、場所を提供してくださるお店があってこそ成立していますよね

そうですね。うちはせっかくウィリアムズバーグという好立地にあるので、このスペースはただお店としてだけではなく、地域の人々のために有効活用していきたいとも思っています。イベントを通してショップの存在だけでなく、企業としての姿勢も知ってもらえます。より安い店ではなく、より地域貢献をしている店を選ぶ消費者が増えていることもあり、街やコミュニティに相乗効果が生まれていますね。

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