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PEOPLE / COLUMN【COLUMN】CENTRAL PARK TRACK CLUB

  • コラム
  • TEXT BY Chiyo Yamauchi  PHOTO BY Takuya Sakamoto
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やるからには、つい “もっと上” を目指してしまう…。仕事も趣味も “ほどほど” にしておけないーー、というのは、ニューヨーカーの性かもしれない。ストイックというか、凝り性というかなにはともあれ、それは「ニューヨーク・ステート・オブ・マインド(ニューヨーク的な心のあり方)」の大事な一部分である。

メトロポリタンランナーの聖地、セントラルパークを拠点とする『CENTRAL PARK TRACK CLUB』(略して『CPTC』)には、そんな “ニューヨーカーらしい” ランナーが集まる。今回、訪米したikismの小林は、CPTCを訪れた。

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「毎週木曜日は、ここ、セントラルパークの貯水池の入り口で待ち合わせるんだ」。柔和な笑顔でそう話すのは、長らくCPTCのコーチを務めるトニー。1981年、自身が「20歳の時からクラブのメンバーだ」という、クラブの長的な存在である。

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木曜日のセントラルパークでのトレーニングは、もはやCPTCの伝統といっても過言ではない。なぜなら45年以上の月日の中で、中止したのは大雪や台風の時ぐらい。それ以外は、猛暑の日も、マイナス15度を切る極寒の日も「それでも走りたい」というメンバーが現れ、10〜12キロほどのトレーニングを楽しんできたというのだから。

 

クラブの設立は1973年。市内の男女が参加するランニングクラブとしては、もっとも歴史が長い。また、過去にはオリンピック出場選手が所属していたこともあり、レベルが高いことでも知られている。メンバーは、大学生から50代までの幅広い年齢層のランナーたち、約450人。これだけいると、中には年会費は払っているが、練習に現れたことがないメンバーもいる。だが「健康でさえいてくれれば、そのような関わりかたもあり」とトニーは語る。所属条件として「10キロを42分程度で走れること」を掲げてはいるが、そこまで厳格な規則ではない。その程度の走力があったほうがよりトレーニングを有意義にできるという配慮によるものだ。

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「設立から45年近くも続いている秘訣は?」とたずねる小林に、トニーはこう返す。「昔から、CPTCで練習することは、上を目指す市民ランナーにとって一種の “憧れ” であり続けているからじゃないかな。走力の高い仲間と質の高いトレーニングができるからね」。

すると、「CPTCが持つハイレベルチームっていうブランドもそうだけれど、一番の魅力はトニーのようなフレンドリーで人徳のあるコーチがいるから」とメンバーたちが付け加える。職場の同僚や大学の後輩も『CPTCは練習内容も充実しているし、それになんか楽しそうだよね』と加入を決めているとのことだ。

日中は金融の仕事をしているという社会人ランナーのフィルはこう話す。「仕事以外で人と知り合える機会は意外と少ないと思う。だからこそ、こうやって好きな事、つまりランニングを通して、年齢も人種もバックグラウンドも異なる人々と深く知り合えることに、特別な価値を感じているよ」。

「それに、みんなのCPTCへのロイヤリティが高いからか、クラブ内で出会って結婚するメンバーも多いんだ」とトニー。そんな話をしていると、唐突にトニーは、貯水池を周回する一人のランナーを指差した。名前を呼ばれて振り返った白髪の61歳の男性は、コーチの先輩ジョンだ。CPTCで出会った女性と結婚し、OBとなった今も変わらず、セントラルパークで「木曜日のランニング」を続けているのだという。

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ジョンとトニー、CPTCで出会った頃は「お互い20代だった」と振り返る。移民のトニーと上流階級育ちのジョン。もしかしたら二人が見てきた(過ごしてきた)ニューヨークは異なるかもしれない。しかし、走ることを通して育んだ、一生の友情。

なんだか眩しいものを目の当たりにした小林も「最高ですね、僕もランニングを通して、彼らのような年の重ね方をしたい」とポツリ。そういった「かけがえのないもの」が存在するのもまた、セントラルパークが「ランナーの聖地」と言われる所以であるに違いない。

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