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PEOPLE / INTERVIEW誰かのために走ることがいま、新しい価値を生む(後編)谷口真大

  • インタビュー
  • TEXT BY Sakura Sugawara  PHOTO BY Yusuke Kashiwazaki
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――近ごろは、NBRC大阪の練習にも参加されているそうですね。

1月・2月は自分が中心となった練習会を開催したり、僕がぺーサーを務めて一緒に走ったりと、自分としても新しい経験をさせてもらいました。誰もが走りやすいように先導するには、ペースの上げ下げをなるべく減らすのは第一条件。楽しく、のびのびと走れるように「リラックスしていきましょう」なんて声かけもします。細かな部分で、僕自身が長年、さまざまな方々に伴走してもらってきた経験が生きていると感じますね。僕が練習に関わることで、みんなが走ることを楽しいと思うきっかけが増えたら、とてもうれしいです。

――ブラインドランナーがペーサーをするのは、とても興味深いですね。伴走をしてもらいながら、誰かのサポートをする。そんな役割について、どのように考えていますか。

そもそも「伴走」というと、僕らブラインドランナーは“ただ、してもらうもの”と思いがちでしょう。いつも一緒に走ってもらっている松垣さんと僕は、もうそんな気持ちを抱くような間柄ではないけれど、一般的な関係のイメージが払拭できていないのも事実です。でも、そんな僕がさまざまな方のペーサーをすることで、伴走を“してもらう・してあげる”ではなく、“伴走してもらいながら先導する”という新しい価値が生み出せる。それだけでも、すごく意義があるなと思っています。

去年の大阪マラソンでは、普段ジョギングの伴走をしてくれている方のペーサーを務めました。「一緒に走ったら記録が出せそう」と言われて参加したんですが、その方のほかにもついてきたランナーがいて……「4分半で進んでいます、みなさん頑張りましょう」と声かけをして、みんなで走った。人をサポートする楽しさや役に立つ喜びを、強く感じられました。今年は、12月の湘南国際マラソンでサブ3のペーサーを務める予定です。やっぱり自分のなかにも“伴走してもらう側”みたいな気持ちがあったので、“持ちつ持たれつ”で走れる機会が増えたことは、本当にうれしいですね。

 

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――誰かとともに走ること、記録を伸ばすこと、新しい価値を生み出すこと。ランの楽しみはさまざまあるようですが、谷口さんにとって“走ること”とは、そもそもどんな存在なのでしょう。

僕にとって“走ること”は“誰かのためにゴールすること”です。ランナーの誰もがそうだと思いますが、走り始めは自分のことを考えている。記録を伸ばしたいとか、ダイエットをしたいとか、自分だけの目的で走り始めますよね。でも、走っているうちにその目的が“誰かのため”にすり替わるんです。

僕は事実として、伴走をしてもらわないと走れません。そこに対する感謝を忘れたことはないし、これからもずっと持ち続けていきます。でも、一緒に走ってくれている仲間や、応援してくれるサポーターが何百人、何千人といるから……何かひとつでも返せるものがほしい。3年後のパラリンピックで結果を残したいと思うのも、そのひとつですね。周りで支えてくれるたくさんの人がいるから、僕は自分のために走り始めて、誰かのためにゴールしたいと感じるんです。

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谷口真大

幼少のころに失明。盲学校時代に陸上競技と出会い、本格的なトレーニングを開始。 大学進学後、初マラソンながら2時間50分台の好記録をマークし、現在は、JBMA(日本盲人マラソン協会)強化指定選手として、2020年東京パラリンピック出場を目指している。

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