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PEOPLE / INTERVIEW共鳴していく感情を、光に(前編)前田恭介

  • インタビュー
  • TEXT BY Sakura Sugawara  PHOTO BY Takashi Imai
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一歩ずつ前に進むことを楽しむ。きっとそれは、ランと心を馴染ませるのに有効な、ひとつのスタイルだ。『androp』のベーシスト・前田恭介はまさに、こつこつ体を動かすことをいとわない。

「いまできないことが、次の瞬間いきなりできるようになるとは思わないんです。だけど反復して、ゆっくりやれば、絶対ゴールにたどり着ける気がする。だから俺、走るのは結構向いているんじゃないかな」。

この12月に、『湘南国際マラソン』で、初めてのフルマラソンを控えている。走った距離と、そのときどきに思ったことを書き留めるのは、最近できた習慣だ。文字数を決めると続かないから、文章の長さはまちまち。ただ流れていくはずだった時間が、そうして溜まっていくと、形になる。いつだって平等に流れていく概念を、自分の手のうちに留める。そんな感覚を蓄積することが、生きている楽しみになるのだと笑う。彼にとって、今日どんな速さで何キロを走ったということ自体は、実はあまり意味がないのだろう。

「フルは初めてだけど、楽観的だからなんとかなると思っています。走ることをとにかく楽しみたいし、後悔したくないから、そのときまで一歩ずつ進んでおくだけ。それで本当に走り切れるかどうかはその日次第、その日のライブでいい」。

初めての距離を迎えたとき、どんなドラマが生まれるのだろうか?

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だが、時間が経って振り返れば、前田はその瞬間を覚えていないかもしれない。走ることと彼は、すでにその距離感にある。

「いま習慣的に走っていて、これからランが人生の一部になっていくような体感が、なんとなくあるんです。だからフルを走り切っても、事実を淡々と受け止めて、次に向かう気がする。気負わずに、身一つでできるランを、本当にいいなと思い始めているから」。

ランを始めてから、自分の身体にも鋭くなった。たとえば、走っていて歩幅が合わないことがある。転ぶほどではなくても、地面に突っかかるような、違和感を覚えるとき。前田はそれを偶然だとは思わない。ある意味で、神経質ともいえるほどのセンサーだ。

「走っているときに感じる身体のズレは、一瞬でも見逃さないようにしています。何かおかしいと感じるなら、絶対に意味があるはずだから。ジンクスのようなものだけど、自分を振り返ってみて、メンテナンスに行ったりする」。

※本取材は、2016年10月に行われました。

前田恭介

緻密なサウンドアプローチと、多角的な音楽表現のみならず、アートワークや映像でも注目を集めるロックバンド「androp」のベーシスト。2016年10月にはこれまでの世界観を大きく変えるアルバムとなる『blue』をリリース。『湘南国際マラソン』が初めてのフルマラソン挑戦となる。

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