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PEOPLE / INTERVIEWそれぞれの日常を分かち合い、広げる(後編)小林修人

  • インタビュー
  • TEXT BY Sakura Sugawara  PHOTO BY Chihiro Ishino
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ランはシンプルだからこそ人間らしいスポーツだ、と小林は言う。身体だけでなく、さまざまな物事の考え方、向き合い方。トレーニングを積み重ねていくことで、そんな自分の輪郭が見えてくる。

「思い通りにいかないことがあるときにも、ランに助けられていると思います。電車のなかで答えが出ない考え事でも、走ってくれば一気にクリアになる。忙しいときほど走りたい。自分をすっきり、シンプルにしたいから」。

好きで続けられるスポーツが身近にある――そもそもそれだけで充分にすばらしいのだと、笑顔を浮かべる。

彼がコーヒースタンドを仕事にしたきっかけは、ランニングステーションへの憧れだという。あくまで日常を満たすカフェとして存在しながら、走るひとたちの交差点になるようなスポット。あえて“ランニングステーション”を謳わずに、そんな空間を作りたい。

「僕は、走るひとたちの立ち寄る場所が、ランニングステーションという特別な施設ではなく、いつものカフェでいいと思ってるんです。だって、走ることもカフェも、日常だから。いろんなひとが集まるなかで、ランナーも。もちろん、サーファーやサイクリストだって来る。そういう位置づけのカフェができれば、それをきっかけに走り出すひとも出てくるはず。アクティブなひとが少しいるだけで、カフェの雰囲気って変わるんですよね。身体を動かしているひとたちは、温度が高いから」。

目標の足がかりに、いまはカフェという形で、毎日でも通いたい空間を提供する。そんな場所を、訪れたひとがどう使うか、小林がわざわざ定義することはない。

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ランニングコミュニティ『ikism(イキズム)』も、小林が目指すカフェと似た空気をまとっている。

「走ることが好きなひとは、きっともう一人で走っているだろうから、わざわざグループランをする必要はないと思う。むしろ『ikism』は、みんなで集まって話をするような……いつもそれぞれに走っているひとたちが、自分の“何か”を持ち寄るようなコミュニティにしたい。お互いのランについて話してもいいし、たとえばサーフィンとかコーヒー、靴の話なんかも楽しいですよね。サッカーの日本代表も、普段は自分の場所で各々プレイしているけれど、同じ目的のために集まるでしょう。そんなふうに僕らも同じ空気を共有して、感じるために集まれば、面白いものが生まれる気がするんです」。

小林の淹れるコーヒーが、年齢や性別、国籍を問わずコミュニケーションを生むツールであるように、走ることもまた手段のひとつだ。走ること自体は目的にならない。だからこそ、世界をやさしく繋げ、拡張していくのだろう。

さまざまな日常のなかで、当たり前の顔をしているランが、きっとここに集まり始める。

 

小林修人

1984年生まれ。アパレル業界を経て、2013年に茅ヶ崎でコーヒースタンド『iki ESPRESSO』を開店。現在は清澄白河に拠点を移し、新しい『iki ESPRESSO』を運営している。神奈川県茅ヶ崎市在住で、日頃から湘南周辺をラン。『湘南国際マラソン』には毎年挑戦するサブ3の常連。ベストタイムは2時間54分49秒。

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