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KOZUE AKIMOTO MEETS NB WOMEN

歩いてきた道を振り返ったとき、
自分も知らない進化に気づく

「積み重ねてきた時間が 確信につながる」

身体を動かすことが楽しくてたまらないと、秋元梢は言う。トレーニングをしていると、もっともっとやりたくなる。こんなにものめりこむとは思わなかった。なにか悩み事を抱えていたとしても、目の前のことだけに息を切らしていれば、頭のなかを真っ白にできる。余計なことは一切考えない。それにくわえて、成果が数字で現れてくる面白さがある。
本格的にトレーニングを始めたのは2年前。身体の不調がきっかけだった。めまいや動悸から始まって、眠りたいのにうまく眠れなかったり、食欲がわかなかったり……どうにも歯車がうまくかみ合わない。身体を動かせば、きっとなにか良いほうに向かう気がした。ジムでパーソナルトレーナーをつけるようになり、心地よい疲労感を知ってからは、身体がぐっと楽になった。ずいぶん心を忙しくしていた時期でもあるから、頭を無にする時間ができたのもよかったのだろう。そうして運動は、すっかり彼女のスタンダードになっていった。

その習慣は、身体の内側に留まらず、さまざまな影響をもたらしていく。しなやかな筋肉は身体を美しく引き締め、これまでになかったメリハリを生んだ。パリのショーからオファをもらったことや、スポーツブランドの仕事が増えたのも、その変化と無関係ではないだろう。

「トレーニングで見た目が変わってくるのはもちろんだけど、自分のなかにも自信が生まれる。『私はちゃんと動いたから、こういう体型になれた』っていう具体的な事実が、力をくれるというか……身体を動かしているからこそ、得られる確信があるんです。そもそも、食べないダイエットをして単純に痩せたって、まったく魅力的じゃない。私は、ちゃんと運動をして、筋肉のついた身体がいいんです。それを見た誰かがどんな評価をしても、自分自身が満足できる身体になれれば、それでいい」

彼女は、他人の価値観に左右されない。幼いときから横綱・千代の富士の娘として、さまざまな視線を浴びてきた。心ない言葉に気持ちが沈んだこともあるけれど、いちいち取り合っていても仕方がないと思うようになる。彼女へ投げつけられる評価に、何も軸はないからだ。誰かの切り取り方ひとつでがらりと変わる判断に、意志を持って立っている自分が、翻弄される必要はない。

「たとえば、なぜそんなに強くいられるのかと聞かれても、強くいようと思ったわけじゃないんです。たまたまその人からは、私が強く見えただけ。そういうふうに、誰かの言葉で自分の受け止められ方を知ることはあるけれど、それはただの結果なんですよね」

誰かに魅力的だと思われたいから、こんな自分になりたい。そうやって目標を作っていく人はたくさんいるし、それもひとつのやり方だ。でも、秋元梢には当てはまらない。彼女はただ自分のスタイルを貫いて、そこに生まれた他者の視線を、淡々と受け止める。

「死ぬまで誰かが面倒を見てくれる保証があるなら、誰かに任せたっていいけれど、結局生きていくのは自分だけ。だったら、自分の基準で決めていきたい」

モデルという仕事にも、確かな動機を持って挑んでいる。

「スタイリストさんとメイクさんは、私に衣裳や化粧を乗せるわけだから、目的が一致してると思う。でも、カメラマンさんとは『もっといいものを作ろうよ』『こっちのほうがいいんじゃない?』みたいな勝負なんです。ひとつの作品を一緒に作っているとはいえ、相手の強さに負けたくないし、相手の色にただ染められるのもいや。私がモデルに選ばれた意味をきちんと考えて、最高のものを作るために、責任を持って意見を交わしていきたいんです」

彼女の仕事は、誰の目にふれるかわからない。雑誌も広告も、どんどん拡がっていく。全世界の人が見て「いいね」と思ってくれればいいけれど、そうはいかないことも知っている。だけど、自分がつまらないと思った仕事は、きっと誰が見たってつまらない。いまの自分が獲得している身体やこれまでの人生経験を、真摯にぶつけて、いつだってベストのものを作る。それが誰かの心に響けば、もちろん心からうれしい。

 

最終的な目標はあまり考えていない、と言う。自分の歩いた道や積み重ねてきたことが、何かにつながっていく。そんな意識を持って動き続けていれば、きっと必然的などこかへたどり着くはずだから。

「進化とは、現状と違うものを手に入れること。そのときは気づかなくても、それなりの過程を経て進んでいれば、いつかわかると思う」

彼女は、進化そのものをまるで見ていない。息をするのと同じくらい自然に、自分のやりたいことを選び、やるだけ。ふと振り返れば、これまでの道のりが、何かに結びついている。

「そのときどきで悩んだり、考えたりはしているけれど、つねに目の前のことを頑張っていくしかないんですよね。パリに行き続けることで、多くの人たちに自分の存在を知ってもらえたから、運よくショーに出られた。でも、どれだけ出たいと思っても、それまでは基準に達していなかったし……おそらくトレーニングをしていなかったら、出られる日は来なかったと思う。どんなに強く願うことがあっても、そこまでの過程がなければ、きっと叶わないんです。いまのトレーニングだって、続けていればいつのまにかまた、何かにリンクしていく感覚がある。好きなら、情熱を持って向き合い続けていくことが、結果を連れてくるんだと思います」

ただし、決して頑固にはならない。自分の好き嫌いははっきりしているけれど、直感が許せば、何事にもまずはトライしてみる。誰かの価値観だって、体感してから判断しても遅くはない、ということなのだろう。昔はモデルにしか興味がなかったけれど、テレビに活躍の幅を広げたこともそうだ。さまざまな風を臆せずに取り入れるからこそ、彼女の価値観は強く、確かなものになっていく。

たとえば年齢を重ねることも、ひとつの進化だ。今年、彼女は30歳を迎える。知らない景色は鮮やかな期待を孕んで、大きく膨らむばかり。

「やりたいことをやっている人は、やっぱりいくつになってもかっこいい。私はメイクをしていないと実年齢よりだいぶ若く見られるけれど、そんなのちっともうれしくないんです。特別若くある必要なんてない。年齢を楽しんでいる先輩たちを見ていると、歳をとることって素敵だなと思うから。いつまでも好きなことを、好きなようにやればいいんですよね。30歳でひとつ節目を迎えれば、きっと景色が変わるから、これからが本当に楽しみ」

年齢を重ねれば、生活も暮らしも変わっていく。年相応の新しい喜びも知るだろう。でも、そのなかでずっと変わらない価値観もある。それがすなわち、彼女の意志だ。目の前に刻まれていく瞬間を柔軟に取り込みながら、秋元梢はいつも自分自身の時間を生きていく。ずっと先まで歩き続けて振り返ったとき、そこにはきっと、ゆるぎない進化の歴史がある。

Text: Sugawara Sakura

プロフィール

1987年東京都生まれ。モデル。漆黒のロングヘアに“ぱっつん”前髪、目尻を跳ね上げたアイラインがトレードマーク。アジアンビューティな容姿で注目を集め、ストリートからモードまで幅広いジャンルのファッション誌に出演。最近では国内だけにとどまらず、パリコレクションをはじめとする海外のショーや広告でも活躍中!

http://www.lespros.co.jp/

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